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zoom RSS きらめき高校吹奏楽部 〜もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら〜  振替バレンタイン

<<   作成日時 : 2017/12/04 00:31   >>

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天門ゼンアクで準優勝した俺氏


こんばんは。準優勝しました。バギクロスです。白緑メタリカ絶許!


あれあの、現役部活時代、定期演奏会ではもっぱらダンスとかコスプレの企画には参加しないことが多かったぼくですが、2度だけそういうのに参加したんですよね。

その内の1つを今回のきら高の定演で書きたいんですけど、ちょっとムリがあるというか、合わんかなぁwwと思ってまだ迷ってます。ただやるとしたらもうこの年が最後のチャンスでしょう!伊集院君の立ち位置的にww


もう既に頭の中ではバラエティ豊富な第2部ができつつあるので、定演の第2部もいい加減にちゃんと演奏するプログラムが欲しいけど、今のきら高は弱小だからそれぐらいの手数でごまかしてもいいのかもしれん…。


ああ迷うなぁ。
顧問の先生ってこうやって迷いながら曲きめてたんだなぁww

以下本文
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白のマグカップに入れたモーニングコーヒーを口にもっていって、飲んでから、舌の上で転がしたそれに首をかしげる。自然とその後に、自嘲的な笑みが続いて、伊集院財閥の御曹司は、心中で思った。…まるでダメだな。


伊集院家から与えられたこのアパートの部屋は、何の変哲もない、豪奢とはかけ離れた物件だ。外の寒さが侵入するのを当たり前のように許してしまうし、窓の外の眺めが良いかというと、そうでもない。他の住宅があちらこちらに見えて、ランドマークたるあの伊集院家さえ見えやしない。


だが、それも何か、あの理事長の狙いであるように思えて、コーヒーの味とは違う苦さを、端正な顔の上に浮かばせる。



…頼るな、と。そういうことのような気がするな。



しかし、あれから伊集院 レイが指導者たる資質を部の皆に見せられたかというと、まだまだ満足できたものではない。それ以上に、他の部員の能力に頼るところが、多すぎる。


…本来ならこのような穏やかな時間を過ごしている場合ではないな。
だが、理事長に認めていただけるほどの結果を残すためには、僕はどうすればいいのか。結果だけを重視する方とは、到底思えない。きっと、プロセスにどれだけ僕が関与したか、それも何かを通じて見ているはずだ。


その、「何か」と思われるものが、インターホンを押してきた。
それが誰か、姿を見ずともわかっていたから、伊集院は言った。


「入りたまえ」


扉が開くと、綺麗な長髪と共にいたずらな笑みが揺れて、「よっ」などという、とても育ちが出ているとは言えない挨拶をしながら、同級生が入ってきた。


「邪魔するぜ。
 おっ、コーヒーか。
 あたしもくれよ」
「あ、ああ…いや、龍光寺嬢…」
「んだよ、別にいいだろ?」
 

今は同じアパートに住む、御曹司にとっては幼馴染ともいえる女子は、靴をちゃんと揃えて脱いだ割にはずけずけと部屋内に入り込み、まるで自室みたいな感覚で食器棚からマグカップをまっすぐ手に取ると、あまり高級とはいえないコーヒーメーカーに淹れてあるそれを汲む。


「ま、待ちたまえそれは…」
「…。
 
 おい、これ…」


一口飲んでから、あからさまにしかめた顔でマグカップを見て、一言。


「まずいな」
「悔しいが否定しようもない…。
 すまない」
「いーや?

 しっかし、よくもまあブラックを
 不味く淹れられるよなぁ…」
「なっ…!
 し、仕方がないだろう!
 
 僕は君ほどは機会に恵まれては…」
「はは、悪い悪い、悪かったって。
 

 …まあそうだよな。
 今までは、なんでもかんでも家の奴らが
 やってくれてたんだろうし、な」


痛いところを突かれて、返す言葉もないのを誤魔化すようにカップに口をつけて、酷評されたそれを喉に通す。しかし、これもまた痛いことに、レイには否定の仕様がなかった。


「…我が校吹奏楽部には、
 実家が喫茶店という部員も居る。

 彼女は僕と同い年だが、店の手伝いもするとのことだ、
 きっとこんな風に…朝から忍耐をすり減らすような
 飲み物は、作らないだろう」
「それも、お前の自慢してた
 伊集院家が誇るなんとか諜報部って奴の
 調べか?」
「…いや。
 彼女をよく知る者なら、誰でも知っていることさ。

 
 それだけじゃない。
 部活動の後で食堂で働く部員も居る、
 両親の手伝いをする内、料理が得意になったという方も居る。


 ……情けなくなるな、我ながら」


壁に背を預け、フッ、と冷笑する伊集院 レイ。
彼が今まで受けてきた英才教育は、家の外では通用しないことも多い。まったくの無駄、間違っている、そういったことはない。だが、それよりも基本的な部分、なんというか人間力ともいっていいだろうか、そういうものが、彼には不足していた。


社会の仕組みや経済の流れ、政治の在り方、そういうものを学んできたはずが、一般的な家庭の夕飯がどの程度の予算で作られるのかすら、知らなかったりする。上流階級にふさわしい、肥えた舌を持つはずが、ファーストフード店では何を頼めばいいかがいまいちわからない。


皮肉なものだと彼は思う。
もしも自分が人間でなければ、野犬や鳥であれば、それほど周りと差は無かったろうに、ただ社会というものを持つ人間である故に、普通に生きていれば身に着く経験や知識が、彼から遠のいてしまった。



だがしかし、打ちひしがれる彼を見て龍光寺 カイは、一笑して図星をついてみせる。


「お前、そんなスネたこというのは、
 今日が「あの日」だからか?」
「ぬっ、い、いや、決してそういうわけでは…」
「なんだよ。
 お前、もしかして“あいつ”にチョコでも
 作ってやろうってか?」
「ち、違う!
 そんなわけないだろう!

 だいたい、僕はそういう立場では…」


いたずらっぽく笑みを浮かべて、また「悪い悪い」と謝る龍光寺嬢。彼女にはよくわかっていた。彼が今、本当に渇望するべき能力は、日常生活と密接なものとは、違う種類のはずだ。それなのにこんなことを言うのは、レイが混乱しているからだ。


急転直下、変わった日常。
伊集院家からは試練を与えられ、それを乗り越えるのに必要な能力は、伊集院 レイほどの秀才なら、ある程度目星がついているだろう。だが、それをプレゼンの場で出す前に、こうした日常を過ごす時間が幾日も訪れる。そうすると、目前の問題が次々と浮上する。


将来もずっと誰かに任せることになるのだからと、家事などやらせてもらったこともない。もっと大きなファイナンス活動をするのだからと、金銭管理など任せきりだった。スケジュール管理さえ、毎日キツキツに詰まっていたから、自由にしていい今の時間をどう過ごせばいいかすら、よくわからない。


次々と多様な経験、知識を求められていくと、いったい何から手をつけていいものか迷い、優先順位がつけられなくなって、然る。それを身をもって知っている龍光寺 カイだからこそ、今の彼にとって、最大の味方だと言っていいのかもしれない。


「ははっ、わかってるって。
 そんな必死になられたら、マジかと
 疑っちまうけど、さ」
「な、そ、そんなわけ…!」
「いやいや、ごめんって。

 けどさ、お前、覚悟してんのか?」
「覚悟…というと、いったい何の…」
「“あいつ”はそりゃ、せいぜい置き勉しまくってて
 スッカスカのかばんの中身をお土産パンパンにして
 帰るぐらいで済むだろうさ。


 けど、お前の場合。そうはいかないだろ。

 なんせきらめき高校のすべての女子の味方!
 なんて抜かしてんだからさ」
「……」


長い前髪の下、目が鋭く研ぎ澄まされる。それを見てカイは思った。…計算してる計算してる。


「…い、いや。
 この際、貰えるのなら食糧はありがたい。


 だが…どうだろうか。
 どれぐらい、貰うだろう…」
「きら高はマンモス校だからなぁ。
 要るんじゃないのか?ダンプカー」
「そ、そこまでは!
 い、いや。そうか、そうだろうな…。


 僕のカリスマ性、美貌、資質…それらすべてが
 女性方を魅了してやまないのだ…仕方がない…」
「おいおい…」


カイには、時々わからなくなる。こういうナルシスト発言は、多分キャラ作りなんだろうなと思っていたのだが、もしかしたら結構素も入っているのか?と…。


「まっ、なんだったら。
 今日だけ貸してやってもいいぜ」
「貸す、というのは…。
 いったい、何を」
「だーかーら。

 ダンプカーだよ」
「……。


 …有事には備えたい。
 女性方の想いを裏切らないためにも…」


さすがに大げさだろうか。提案しておきながらもカイはちょっとそう思ったのだが、この時は「まあ伊集院家に貸し作っとくのも悪かないか」程度に考えていた。ただ、後日、彼女は思うことになる。――半分冗談だったけど、言っといて正解だったな…。と。


































 

本当は昨日の部活の時にでも渡せばよかったのかもしれない。その方が日付的にも、要領としても、良いような気がする。しかし、グループトークでも、前々から流れていた噂でも、みんな「今日だ」と満場一致だった。


――土日などの学校が無い日に2月14日が来てしまったら、前倒しか後倒しになって、平日に渡すのが伝統。


樹の話といい、みんな気にしすぎではないかと思う生徒もいないわけではないが、意外とこういうところは、特に女子たちは気にするらしい。もっとも、男子諸君にとってはいいきっかけなのかもしれない。大人になっていくにつれて、誕生日だの記念日だのと、女性はもっとうるさくなっていくのだから。


…都子ちゃんはもう渡したんだろうなぁ。
どうしよう、いつ渡せるかなぁ…。


学校までの道の最終コーナー。
春先には「自分の道は自分の力で切り開くべきだよ!」なんて伝説を一笑していた快速のスプリンターも、ちょっと寒そうに白い息をマフラーから漏らして、まだかなまだかな…と心の中でつぶやいていた。


なんとなく陽ノ下 光は思っている。朝勝負じゃないかなぁ、とか。多分、部活が始まる前などは、彼もピリピリした雰囲気があったりするし、色んな子に話しかけて、部の用事なり楽譜の用事なりを話していることも多い。それに、部のみんなが居るところで渡すのは、ちょっと恥ずかしい。


だったら部活の後はどうなのかというと、こちらも多分、難しい。ずっと待っていれば帰りに捕まえることができるかもしれないが、都子が一緒に居たり、思いもよらないところにひとりでふらりと行ってしまうこともあったりと、なんともいえないところがある。


無論、この朝もそれは同じことがいえるかもしれない。
だが、練習が始まる前までは、結構彼も眠たい顔をしていたりして、隙は多い。結局、彼がいつものような飄々とした感じになるのは、朝に呼吸練習なり柔軟運動なりを始めて以降のことが多いのだ。


…じゃあ、アンコンの時はどうやって目を覚ましてたのかなぁ。
都子ちゃんもあんまり起こしにいってなかったみたいだけど…。


12月には、朝に河川敷でランニングをしていた時に、迎えに来てくれたこともあったが、あの時の彼は割と、朝からしゃきっとしていたように思う。


…多分、家でやってくるんだろうなぁ。
呼吸練習とか、柔軟とか、全部…。


彼の部屋に入った時、机の上には教科書やノートは何も乗っていない清々しい様が広がっているのだが、代わりに、メトロノームやウォークマン、何かメモされた五線紙などが置いてあるのは何度も見たものだ。


ああいうところを見せつけられると、光としては、なんというか、とても困ってしまう。日々、彼の練習や、結果としての音を注視ならぬ注聴して、どうにか近付こうと気合を入れてやっていても、彼は何か、生き方というか立ち振る舞いそのものが、まさに吹奏楽部という感じがして、ただ立っているだけでも自分を突き放してくるような気がするのだ。


…小さい頃から変わってないなぁ。
待って、って言っても君、全然待ってくれないんだもん。意地悪だよ。


以前、朝日奈 夕子などが彼の噂をしていたのを、光は聞いたことがある。「あー、彼?マジ頭吹部ー」なんて。しかし残念ながら、光にもそれは否定できなくて、むしろ「その通りだよね」なんて思ってしまったものだ。


…この前、「まずいんじゃないの」って言われたり…。
部活抜け出しちゃったり、サーカスに行ってたり…。


なんか最近の直人君、なんか隠してるんじゃないなかぁって思って…。この前はちょっといつも通りに話せたけど、おとといも用事があるっていってどこか行っちゃったし…。


別にケンカしてるわけじゃないけど、仲直りっていうか、そういうのも含めて、渡せたらいいんだけど…。



かばんの中身を気にして、また背伸びし直す。一瞬つま先だけで立った細い脚は、前に彼からほっぺのことを言われたように、少しだけ中学時代に比べて白くなった気がする。でも冬だからっていうのもあるかなぁ、とも光は思うのだが。


…まだかなぁ。そろそろだと思うんだけど…。


それぐらい早く来過ぎた通学路。そもそもメールするなりLINEするなりした方が待たずに済んだし、むしろ家に起こしに行くぐらいの方がよかったのかもしれないが、一応プレゼントなのだから、少しは驚かせた方がいいかなとか思ってしまう頭もあるのだ。


「…あっ」


ふと、つい声が漏れた。生徒数の多いきらめき高校でも、待ち人はすぐわかる。それは光が小さい頃から彼を見てきたから…というわけではなく、この学校でもテナーサックスのケースを担いで登校してくる者など、ひとりしかいないというだけのこと。


まだ距離がある。なのに何故かわからないけど、顔が熱くなってきた。さっきまで寒かったのに。駆け寄っていくべきか、待っていて声をかけてもらうまで動かずにいるべきか。


いや、もう行った方がいいとみた。
彼の横にうさぎさんもポニーテールも見当たらない。関心しないが、歩きスマホで何か打ちながらイヤホンで音楽を聴いて、眠そうな顔をして歩いてくる幼馴染のことだから、こっちに気付いてくれないということも十分ある。


しかし古我先生があんなところを見かけたら、涙の熱血教育が行われ、ケータイもイヤホンも職員室に後で取りにこーい!となること間違いなしだろう。優しい幼馴染に言ってもらえる内が華というもの。


「直人君!」


走っていって、いい距離になってから声をかける。自分があげたイヤホンのせいで気付かないかと思ったが、彼はすぐにぴくりと反応してイヤホンを片耳ずつ外し、手を挙げてくれた。


「はよ(おはよう)」
「おはよう!

 もうー、なんか朝から挨拶がチャラいなぁ」
「ぬあー、また言われた。
 いいっしょ、チャラいぐらいんが親しみあって」


もはや否定すらしなくなってきたところが笑えてきて、光の口許が自然と緩む。が、彼の後方の電信柱から、密かにコラの耳型の輪っかが2つうらやましげに覗いているのが見えて、光は口パクと表情で彼女に伝えた。「ごめんね!」だが、もうコアラちゃんは引っ込んでスニーク状態だったため、返事は返ってこなかった。


「光?」
「あっ、ごめんごめん!
 ちょっと…えへへ」
「へぇ?なになに。
 光も妖精さん見えてんの」
「やだなぁ、居たらいいなとは思うけどさぁ」
「はは、なにそれ。
 まあ、案外居たりするかもよ」


えー?とまるで相手にしない光に対し、直人は密かに、ポニーテールの幼馴染がかばんに着けている真っ赤なうさぎさんを思い返していたりするのだが、それこそ話したところで信じてもらえるはずがない。「魔法使い」さんとして月夜見さんに返事を打ち込んでいたケータイをしまい、イヤホンもまとめて直した彼は、改めて光を促して歩き出す。


さて、いつ渡したものか。
彼との話は楽しいけれど、それ以上に今は大事なことがある。だから切り出さなければならないのだが…。


「ねぇ直人君。
 今日って何の日か知ってる?」
「今日?

 ……。
 うっわ!やば!」
「え?え?」
「英単のテスト今日じゃん…。
 はい死亡ー、おつかれしたー」


やっちゃったーみたいな顔をして「てへぺろ」なんてふざけている彼のせいで、また渡し時を失う光。


…もーっ!そこは察して渡しやすくするとこだよ…!
まさか今日がバレンタインの代わりの日って、知らないのかな…?


そんなことを思うせいで、笑顔がひきつる。
と、ふと談笑していた時、楽器ケースの紐を支える彼の左手の指が、話している彼とは独立しているかのように忙しく動いているのが見えて、そんな多細胞生物ぶりに、呆れと感心の伴うそれに、笑顔がまた傾く。


「とか言って。
 やっぱり君って、部活のことで頭いっぱいなんだから」
「へ?」
「その指。それ、「宝島」だよね」


そう言われて、冗談でふざけていた直人の笑みが消える。驚いた風に目を見張り、やがて、かけてきたかまを肯定した。


「あ、ああ、そうだけど…。
 よくわかるね。

 これ運指B♭管なのに」
「だっていつも見てるもん」


何気なく言った言葉だったのだが、言われた本人は多少、意識してしまうところがあった。

そんなフィンガリングの部分から光が自分を見ているとすると、本当に末恐ろしい。彼女の成長速度は、小学校時代の直人と比べて、まさに快速と言わんばかり。その成長を支えているのが自分というお手本なのだとすると、俺もまあこの快速のランナーから逃げまくり続けないといけないわけねと、プレッシャーを感じずにはいられない。


…ただまあ、それぐらいの方がいっそ頼もしいよ。
いつまでも俺が傍に居られるわけじゃないんだから…。


「君がメロディ吹く時って、
 ……こうするでしょ?」
「あー、かな」
「けど片桐さんは
 ……こうするよね」


ポルタメントを口のみでやるか、指も使うかの差。加減の具合によって、音と音の推移を円滑にしたり、音の粒をはっきり浮きだたせたり、幅を持たせることができるが、光に言わせれば、そんなところにも2人のセンスの差が出ているらしい。


それを歌いながら指で説明してみせた光だが、そのどちらが良いのかまでは、わからないようだった。


「これってさ、
 別に、どっちも間違ってるってわけじゃないんだよね?」
「ああ、まあ…。
 っつーかほんとよく見てんな。
 
 
 片桐さんのやってる奴は、口でしゃくって
 コントロールしてるから、指が動いた時の
 パラッっていうような音がしない。

 前の音から引きずるような移動をするから、
 エネルギーがより前に行って、ガンガン先に進んでく
 片桐さんらしい演奏になってると思う。


 俺のは指で装飾音符気味に入れてるし、
 処理も早め。軽快に吹く時はこっちんがいいけど、
 盛り上がりを濃いめに出したい時はまあ、
 あっち(片桐式)んがオススメ」
 

指の動きを見せながら教えてくれる彼に、興味津々といった感じの頷きと相槌を見せる光。本当は「今日が何の日」かを言い出したい気持ちはある。だがいつも真剣に教えてくれる彼の前だと、なかなか軽く流せなくなってしまう。今の光にとって、どこまでも走っていきたくなってしまう並木道は、あの部活。それも、小さい頃と同じ、目の前を本物の高見 直人が走っている道なのだから。


…どれだけ私が頑張っても、先にこの道を走ってた君が積み重ねてきた時間には追い付けないけど…。でも、君がこうやって教えてくれたら、せめて一緒に走れるようになるって、そう信じてる。


…ううん!一生懸命やったら、きっとできる!
だって一生懸命な君が、毎日「できる」ってお手本を見せてくれてるんだから!


「そっかぁ…!
 でも、片桐さんのやってるのを説明できるってことは、
 練習、聞いてるってことだよね?
 
  
 もしかして直人君、わざといっしょにならないように
 工夫してるの?」
「あー、いや。
 っつーかね。できないからやってないだけ」
「えっ、片桐さんのやってるのって
 そんなに難しいの?」
「ああ。全校集会で隣に居たからよく知ってるけど、
 ノッテる時のあの人のフルパワーは、
 全然力んでないのにめちゃめちゃ馬力出てて、
 やばいんだよ。

 
 「宝島」に関してもあんだけ序盤から飛ばしてるってことは、
 ソロはもうめちゃやばいのが出るんだろうね。
 楽しみだけど…まあ、俺には無理無理」


できなくはない、だが同じことをしても二番煎じ。そう言いたげに、今は居ない家族の名を出して、恨めしげにぼやく直人。――俺にパットぐらいパワーがありゃあ、やるんだけどね。


「まっ、せいぜい綺麗にまとめようとするぐらいは
 しますよ」
「あーっ、そんな弱気じゃだめだよ、
 男らしく勝ちにいかなきゃ!」


歩きながらぐっと両の拳を握り、元運動部らしい激励。この後にはいつもの「き・あ・い!」が続くのだろう。が、苦笑してそれを受けた生粋の文化部は、「いやいや」と口癖を自然と出しながらも、軽く言って返してのけた。

 
「別にー。

 勝てないとは言ってないし」

 
苦笑の脇から漏れた何気ない口調だったが、幼馴染に頼もしさと懐かしさを感じさせるには、十分だった。


おかげで、さっきから待ちわびていたはずの彼の顔から、光の視線は思わず外れてしまった。「今日が何の日か」どころか、その背後にある気持ちさえ、魔法使いに見透かされては、たまらないから。


思えば小さい頃と比べると、あまり彼は大きい声を出さなくなった。女子だらけの部活で揉まれたか、とっつきやすい雰囲気なのにやや落ち着きがあるし、昔は公園の砂場で張り合ったあの負けず嫌いも、影を潜めているように見える。


だがこういうところに、その影はしっかり息づいている。
なんだかんだ変わらないところは、中学時代に何度も思い返してみた心のアルバムとそっくりの面影を感じられて、「やっぱり本物の直人君なんだなぁ」と、また帰ってこれたことを神様に感謝したくなる。


「ふふ…。
 君って、変わってないね。やっぱり」
「へ?昔から、ってこと?」
「うん!
 えへへ、なんか、今更だけど、
 帰ってきたんだなーって思ってさぁ。
 うれしくなっちゃう!」


もしもこの子が某ハンバーガーショップで働いていたら、本気でスマイルおかわりしてしまうかもしれない。そんな100点満点の笑みに釣られながら、直人の方も、「こちらこそ」と思ってしまう。


…何がうれしくなっちゃう!だよ。
こっちは毎日その喜びかみしめてるっつーの、まったく…。


「何言ってんだか。
 変わらないのはお互い様っしょ?

 ぽんぽん」
「あっ、こーらぁ!
 こんな学校の近くで頭ぽんぽんしたら…」
「したら?」
「は、恥ずかしいよ…」


とか言いながら抵抗しないでちらちら見てくる幼馴染の光ちゃんは、本当に小さい頃から変わらない。素直でいつだって全力で、元気いっぱいで。だけどそれ故に、直球ストレートな言葉が躊躇いなく繰り出されると、直人も少し、思うところがあって仕方がない。


もしかしたらこうやって抵抗しないのも、噂になっちゃえとか思ってるんじゃないのか。そう思いそうになる部分もあるが、多分、おそらく、心から再会を嬉しがってくれているからこそであって、彼女にそういうつもりは無いのであろう。


それは、小さい頃を知っている直人だからこそ、「まあ光といえばそういう娘だしなぁ」と納得するところ。だが、他の男子はどうだろう。こんな態度を示されたら、普通は期待してしまうのではないだろうか。


たとえば教室の掃除の後。


「――ありがとう!ゴミ出すの手伝ってくれて!
 君って力持ちなんだね!君が居てくれてよかったぁ!」


みたいなことを言われたりしたら。人なつっこい光のことだ、他にも色々なところで活発に声をかけ、かけられ、たくさんの男子に直人同様、元気を分けて回っていることだろう。


そしてそれを過剰に期待する男子が居ても、そうおかしくはない。もう周りには「樹」まで誰かとたどり着き、幸せを手に入れている生徒も、そこそこ居ることだろう。もちろん、「樹」に連れて行ってもらうどころか、逆に連れていってやろうと考える男子だって、数多くいる。


「――やぁ。
 ねぇねぇ、チェックしてる?


 一文字さんって、結構…」
「あー、わかる!結構…なぁ!」
「なぁ!はは、やっぱお前、わかってるね。


 もちろんあれだろ?
 陽ノ下さんも結構…」
「えっ!ちょ、いやいや。
 幼馴染なんだからそういう目では…」
「おいおい、今更そんな真面目ぶったって
 むっつりのレッテル貼られるだけだろ?


 サックスのストラップが横切る谷間…。
 ああ、俺の位置からは見えないのが
 幸か不幸か…。

 お前はいいよなぁ、いつだって堪能できるんだから」


なんて話をいつか坂城 匠ともしたものだ。

そう、あの幼馴染の光ちゃんも、やっぱり「変わらない」なんていいながらも、髪型同様、しっかり変化、成長しているのである。


…っつっても。
俺が光の彼ぴっぴなわけじゃねーし。誰とどうなろうが、俺にはまぁ、どうこう言う資格、ないんだけどさー…。
 



なんて思いながら手をのけて謝ろうとした時、


「 キャーー!!! 」



やけに黄色い声が大きく上がった。びくっと2人とも肩を上げて驚き、顔を見合わせる。


「ほらぁ!見られちゃったぁ!」
「え、あ、いや。

 多分、俺らじゃないっしょ。
 あれ、あれ」
「え??」


一瞬何のことかわからなかったが、近付いてきた校門の中を見ると、校庭になぜか、ダンプカーが鎮座しているのが見えた。しかも積み荷は満載、色とりどりのチロルチョコ売り場を連想させるカラフルな何かが、遠くからではモザイクのように見えて、ダンプカーの地味な色と相反して目を引く。


「な、なんだろう、あれ…」


おでこに手をやって、目を凝らす光。
しかし直人には、あのダンプカーが何なのか、既にわかっていた。


「なんだろうって、あれしかないじゃん。
 あれ」
「えー?あっ!
 伊集院君!?」


朝練前の運動部たちか、多くの女子が列を成してまで謁見しようとしているのは、会いに行けるアイドルでも、全国ツアー中の歌手でもない、きらめき高校に通う生徒の一人。


『やぁやぁ、ありがとうありがとう!

 将棋倒しなどが起きては危険です、
 僕の愛するきらめき高校のみなさんに
 ケガでもあっては大変だ、どうか慌てずにお願いします。


 僕はみなさんの愛、すべてを受け取ります!
 そして必ずお返しをすることでしょう!』
 

メガホンか何かで叫んでいる…と思いきや、どこから用意したのかアンプに繋がれたマイクで朝の演説を行う伊集院 レイ。その姿に苦笑しつつ、直人は疑問を浮かべる。


…あいつクラスになるとあそこまでチョコもらえんのかよ…。
けど、家追い出されたあいつがダンプカーやらマイクやら、どうやって用意したんだろう…。返すとか言ってるけどお返しとかもどうすんだろうな…。


「うわー、さすがだね!伊集院君!」
「マジかよあれ…。
 ダンプカー1台じゃだめなんじゃないの、
 この時間でこれってことは」
「だよね!うわー…」
「あーあー。
 光の大切な想いも、あのダンプカーの荷台に
 うもれちゃうわけね…」
「ええっ、私はそんな、
 伊集院君はいい人だと思うけど、
 ファンってほどじゃないよ」
「はは、そりゃ失礼しました。
  
 
 そんじゃま、行きますか。
 筋トレの成果をね、出したいんで」


ダンベルの動きをしてそう苦笑いする直人に、光は笑顔で「うん!」と頷いてくる。

校門を通って、校舎までの道。女の子たちの声と伊集院のアナウンスで会話どころではないそこを通りながら、2人は密かに思っていた。


…あーあ、結局渡せなかったなぁ、どうしよう…。


…まあ光はバレンタインとか気にしないか。うーん、えー、いや、どうだろう…。意外と本命は決まってる感じだったりすんのかな…。


これは俺、貰えない感じかなー…。



本当はちょっと期待していたりもしたが、それどころではない。伊集院 レイから動き出したきらめき高校は、今日もまた、忙しく動き出そうとしていた。


ポケットの中では、LINEの通知が密かに来ていたりするのだから。


[響野 里澄:おはよう。]
[響野 里澄:話がある。音楽室で待ってるから。]
[響野 里澄がスタンプを送信しました。]


「…ん?なんかケータイブルった気が…。

 あっ」


 
多分、つづく


 


※余談
基本は前倒しなんですけど話の都合的にこうしました。すみません。



  
誤字脱字報告等あれば、下記ボタンよりどうぞ! 返信しないかもしれませんがご了承ください。

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