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zoom RSS きらめき高校吹奏楽部 〜もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら〜   素直になれていたなら

<<   作成日時 : 2018/01/09 01:02   >>

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あけおめー


初夢で赤井さんを見たというメモラーの俺氏です、こんばんはww

最近ちょっと体調がわるうてねぇ…まあスローなのは今に始まったことじゃないし、いいかw


そいやなんかまたEWIで演奏することになりました。
そう、あれから結構練習してるんですけど、前より上手くなったはずが、その分できない事ややりたい事にも気づきはじめて、練習不足感にさいなまれるという、軽いスランプみたいになってます…。


proteusVXのおかげで、今はコナミ矩形波倶楽部のアレンジCDに入ってる「近所の公園」(初代ときメモ)を練習してまして、いやぁ、楽しいですね。ぜんぜん耳コピがはからどらないw


一応職場の人に「聴きたい!」っていわれて動画におさめたのを聞いてもらった時は、「うますぎるwww」って言ってもらえましたけど、ところどころ誤魔化しまくってるので、ちゃんと自分で納得いくのが出来るようになったなら、またブログでうpしたいですね。宝島もあれから少しはよくなったはずなんですけど録音音源つくるのめんどすぎるあああ


以下本文
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久々にこの渡り廊下に現れた、“元祖”きらめき高校吹奏楽部の元部長。

その優しい笑みが首を傾けると、長い髪が頬をつたって、何かのCMのワンシーンみたいな完成された学園の風景が出来上がる。きらめき高校の男子生徒ならだれでもそうだろうが、たとえ校外の者でも、こんな笑顔を向けてもらえるなんて、理想そのもの、羨ましいことこの上ないだろう。


そんな、次の瞬間には「スカッと爽快!」なんて声が聞こえて炭酸ジュースの宣伝でした!なんてなりそうなこの光景は、理想どころか現実のもの。戸惑う後輩の前で先輩の笑顔は長く続かず、やがて「あのね?」と切り出しながら、先輩は自分の口に手をやって、やや神妙な雰囲気を纏った。


何を言われるのか。この、後ろにやった先輩の右手が前に出て、「はい、チョコレート!」と今度はチョコの宣伝に変わるのではないか。そんな期待が直人の中にわずかばかり芽を出すのだが、この感じではそうではないだろう、となんとなくわかってもいた。残念ながら恋愛経験なんてあるのか無いのかわからないような軽薄さだが、女子の生態なら直人はよく知っている。それほど多くの女の子が集まる部活に、長年居るのだから。


「聞いたわよ、部活のこと…。


 もう、どうして一言も相談してくれないの?」
「えっ。

 聞いたって、何を、っすか…」


一瞬にして怪訝になる現役テナーサキソフォニスト。それに鏡映しになるみたく、皐月の表情もまた、不安げなそれになる。しかしそれでも、本当に綺麗な肌をしていて、それ以上に輝いた目をしているなと、直人には感じられた。先の期待が大きすぎるのか、それともこないだの手紙のことが、念頭にありすぎるのか。


「また部活…大変な状態なんだって。
 まだ、よくは知らないけれど、噂で聞いたわよ」
「…噂?
 
 …なんすかそれ、吹部がなくなりそう的なこと、
 誰かが言いふらしてるんですか」
「誰かが、というか、不特定多数に波及してしまったんだと
 思うけど…。


 …あれは、本当なの?」


自分のことのように心配げな顔。それはそうだろう、自分の在籍した部活を2度もなくすとなれば、この人の胸が痛まないはずもない。この人は、部活がなくなることだけでなく、部活を最後までやり遂げられない悔しさや悲しさも、よく知っているのだから。


そんな人に事実を言うことは、送り出した側としては、あまりにも躊躇われた。どうしようか。嘘を言うことが頭をよぎるが、それを咎めるかのように、敬愛する先生の言っていたことも、また同時に脳裏をかすめる。…嘘を使う人がどんな人か、それは常に試されているということ。



「……。
 どこまで話が外に流れてんのかはわかんないすけど。

 
 まあ。先輩の質問にイエスかノーで答えるなら、
 イエスの方が近い、ってことになりますかね…」
「やっぱり…。
 ここのところ何か聞こえてくる音が少し変だったもの…。


 あなたの音は聞こえていたけど、他の人の音が
 全然聞こえてこなかった日もあったし、それに合奏も
 しっかりできている風でもなかったし…」
「さっすが。よく聞いてますね…」
 

苦笑しながら身体の向きごと視線を逃がした後輩に、逃がさないとばかりに詰め寄る先輩。年下の冬服の肩に手を乗せて、同情と心配の老婆心を向けてきた皐月の方を、直人は直視することができなかった。こないだは、こうして乗せられた手を振り払った。


「――待って!」
「――…やめて。楽器持ってんだけど」


…なんでかな。
こうやって優しくされると、なんかだるいっつーか、素直に「ありがとう」って言いたくない気がすんのは…。


…何かがこうして助けてくれることは、すごくありがたいよ。
けど、あの夏…俺たちを、和泉を助けてくれた人は、居なかった。突きつけるだけ突きつけといて、その現実に、どう答えを出せばいいか、大人はみんな、ほったらかしにした。


…だからなのかもしれない。
助けなんてまっぴらごめんだと思うのは。いっつも誰かに助けられてるくせになぁ…。



「……」
「高見君…私が引退した日、
 音楽室で話した事、覚えてる?

 何か困ったことがあった時は、
 私にも遠慮なく相談して、って。そう言ったじゃない」
「…それは…。
 
 いや、まあ、そうですけど、
 っつか、だからアンコンの時も、こないだの留学生ん時も、
 先輩を頼ったのは、そりゃそうっすよ。


 でも。そんななんでもかんでも先輩んとこ
 飛びついてって、俺、ぶっちゃけて迷惑じゃないですか」
「…。
 そんなことない。
 
   
 ただでさえ、あなたと過ごしたあの9月は、
 失った時間を取り戻したいと思って、あがいたんだもの。
 
 
 またあの音楽室に戻れたことは、
 先輩冥利にも尽きたし、吹奏楽部員としても、
 すごくうれしかった」
「い、いや、けど…!」


逃げるように肩の手を振り落とし、楽器をよけて、渡り廊下の壁に手をやると、額に手を当ててため息をつく後輩。なぜこうも、この学校に居る人は、自分が黙っていても声をかけてきて、何かしてくれるのだろうか。


4月に女の子に声をかけまくったことが、伏線になったとでも?いや、これが藤崎 詩織の言う、「直人君は何か持ってるよ」の答えだとでも?


わからない。
ただ直人には、今自分が立っている場所が、見えない境界線のように感じられて、先輩の方へとなかなか振り向くことができなかった。


見えているのは渡り廊下の向こう、理科棟の風景。
しかしどこか名門の中学とダブって見える彼の脳裏では、隣町の学校に行った親友や、遠い電車通学を選んでも約束を守ることを優先した仲間が、手招きしているかのような、後ろめたさがあってならなかった。


――高見ィ。そんなクソバンド早くやめちまえ…。こっちに来いよ…。


――わたしは約束のために遠くの学校を選んだのよ。それなのにあなたは…。




……そんなこと言うなよ…。

こんな風に…こんな風に優しい先輩ばっかだったら、俺らは今頃どうなってたか…。



ため息をついて、痛切に目を閉じ、かつての仲間たちに何度も唱える。ごめん、ごめんって、ごめんってば…。



「…。高見君。
 
 定期演奏会は、決して現役の部員だけが
 頑張って開くものではないわ。


 後援会や、OBや、先生方や、近隣の会社や
 住民のみなさん、保護者の方々…。


 そういう人たちがみんな力を寄せ合って、
 記録や賞にもならない演奏会が出来上がるの。


 だから、その舞台に立つ人たちは…。
 必ず、果たさなくちゃいけないわ」
「……果たすって、それは…」
「…忘れられない思い出になるよう、
 最高の舞台にする、っていう大仕事を」


さすがに、長いことこの業界に居る彼女は、定期演奏会というパッシングポイントに対する定義を、しっかりと持っていた。いい演奏にすること、客を満足させること、広告・協賛金を出してくれた企業に対するリターンを約束すること…そういう理想は、掲げればキリがなく、しかしながらどれも遠いものに思える。


しかし皐月は言う。
あくまでも定期演奏会は、自己満足の世界でしかないと。それが客の心に少しでも響けば幸い、それよりも自分たちが納得できる結末を本番の日に見つけることの方が、肝要、というか現実的な目標の設定になる、と。


それこそまた、見えない境界線に揺れ動く少年にとっては、クソくらえと言ってしまいたくなるようなきれいごとにも聞こえる。


中学時代の仲間たちは、とにかく結果を重視した。
定期演奏会なんていう賞にならないような舞台より、とにかくコンクールなのだと。


自分たちが納得することなんて、何の意味がある。伝統を守り、賞を貰わなくては、吹奏楽部である意味がない。あの場所は、そんな風に言っても、誰も首をかしげないような空間だった。


真夏。
嫌な熱気に満ちた音楽室周りの廊下の、ジト熱いけだるさが思い出されて、身動きできなくなって、先輩の姿も背後に感じられなくなって。



『やぁやぁ、ありがとうありがとう!

 ハーッハッハッハッ…』




そこでふと聞こえた賑やかしい声に、直人は、はっとした。

いや違う、と。


…このまま前に出ること、あの場所に戻るような思考に還ること。それは違うだろ。俺はきら高に入って、今まで何をしてきた?吹けもしない初心者を教えて、良い演奏になんてなるはずのない練習期間の短すぎる舞台に本気出して、けど…全身全霊で嬉しさも悔しさも、みんなと感じてきた。


…あいつに言った通り、俺は…この場所でやれることをやって、そん中で自分に証明したいんだろ。そんな初歩的なことを見失うなんて…。


……こないだの詩織の時といい。
俺、スネるんだろうな。誰かに助けてもらうのがなんか嫌で、どっかに自分は上手いんだとかそういう意識が中学時代からあって、それが邪魔してなんか変な感じになって…。


…いや、俺は上手くねーじゃん。
ああ、いっそあの頃みたいにどやしてくれる先輩だったら、こんな風になんねーだろうに…。




ふと苦笑を一瞬浮かべて、振り返った時にはもう、申し訳なさそうに苦悶した顔が、先輩の前で一礼していた。


「すみません。
 やっぱなんか、どっかこう、
 先輩に声かけんのも申し訳ないなって、思うとこがあって」
「気を遣ってくれるのは嬉しいわ。 
 でも、頼ってくれるのはもっと嬉しいわよ。

 もらってばかりの後輩クンに、
 私だって少しは返したいもの」
「……。

 いや、それっすよ…」
「え?」
「話したら絶対先輩、超ぉ親身になってくれそうだから。
 それが逆に申し訳ないっていうか。
 
 そういう風に思っちゃって」
 

息をつき、けれど言ったような申し訳なさを放棄したかのように、ふらりと数歩、壁にもたれると、前で自然に手を組んだ姿勢で、以前手紙を透かして見た空を見ながら、後輩は言う。



「けど。
 そういや全校集会ん時も、文化祭ん時も、
 先輩たちが居なかったら全然なんとかなってねーわけっすからね。


 …ぶっちゃけ、今回だってなんとかしたいと思ってます。
 いいっすか。いっつもいっつも手のかかる後輩で、
 マジ申し訳ないんすけど」


口調とは裏腹に、先輩を見たその目は真剣に、すがる目つきだった。そんな目を見ながら皐月は思う。やっとね、と。


…私たち、ふつうに出会えていたなら…。
もっとそういう目を向けてもらって、私の方があげてばかりの関係になれていたかもしれないけれど。


…最後の機会なのね。
あなたと、そしてきらめき高校の吹奏楽部と、一丸になって結果を求めることができる、最後の…。


「ううん。申し訳ないなんて、そんなこと思う必要ないわ。


 これは私たちにとっても、嬉しい話なんだから」
「私“たち”、っすか?」
「ええ。
 きらめき高校の吹奏楽部では毎年、第二幕の部で、
 OB演奏があったの。

 
 今年からなくすということはできるけれど、
 やっぱりあった方がいいんじゃないかしら」
「まあ、第1幕と次の幕、その間の準備は
 あった方がいいし、こっちも譜読みする手間をかけずに
 やる曲目が増えるし、願ったりかなったりっすね…。


 …あの。もしかして、そのOB演奏、セッティングして
 いただける、っつーことですか?」


期待を込めて後輩が訊くと、先輩は微笑して頷く。答えは用意していたとばかり。


「ある程度、他の子たちにも訊いてあるの。 
 もしやる機会があればやれるか、って。


 あの文化祭の後、池上君のように市吹に入った子も居るし、
 アルバイトで貯めたお金で楽器を買ったという子も居る。 
 小学校に教えに行くようになったっていう子も。

 
 みんな少しずつ、失った時間に向き合おうとしてる。

 まだ心の整理がついていない子もいるけれど…  
 きっと、あなたの音が私にとってそうだったように、
 元の仲間の音が聞こえれば、気持ちが変わるという事も
 大いにあると思うの。


 あなたたちが用意してくれたあの色紙のおかげで、
 みんなも随分、前のことを気にせずに話せるようになったわ。
 

 だから、できれば…。
 またみんなを揃えて、歳の離れたOBの方とも連絡を取って、
 例年通りに元気なOB演奏ができたらいいなって、そう思うの」


かつて校舎裏で直人だけに見せた、明日への意気込みと、戻ることのない時の流れに馳せた想いをないまぜにした、美しい瞳。それがまた、この渡り廊下に帰ってきた。


最後の帰還。 
それがもしも可能なら、直人としても、大いに望むところだった。だが、思うとことがないわけではない。


「もしそれが本当にできるなら、
 めちゃくちゃいいんじゃないかなって俺も思います。


 プログラムも充実するし、先輩たちにも忘れ物を取りに
 いくチャンスになるなら、いいことずくめなわけですし。


 けど、とりあえずちょっと、自分らだけで話させてもらえませんか。
 

 みんながどう思うかはわかりませんけど、
 もしかしたら先輩たちが部活に関与してくるのが
 嫌だって人も、居るかもしれません」
「それは、うん、そうよね…」
「今まであんだけ助けてもらっといて
 嫌だとか言う人は、まあ、居ないとは思うんですけどね。


 今日とりあえずみんなで話そうと思います。 
 すぐ答えられるようにするんで、
 ちょっとだけ時間、もらえませんか」


そう、全校集会やパトリシアの演奏会などで、今まで助けてもらっておきながら、嫌だというのは虫のいい話かもしれない。だがそれでも直人がこの段取りを取ったのは、牧原や美樹原など、先輩という存在に厳格なイメージを切り離せないでいる人たちを気遣ってのことだった。


…それに、ウチの部活を特別に思ってんのは、どうやら俺だけじゃないらしいし。



心当たりは幾らかある。そういう人たちにとって、“元祖”きらめき高校 吹奏楽部が今更出てきてほしくない疎ましい存在であるということも、もしかするとあるのかもしれない。


もしも元々からあった吹奏楽部が残ってさえいてくれれば、全校集会もなかったし、普通に世間一般の強豪校みたいな部活動をしていられたはず。高見 直人自身も、そんなことを一切考えずにここまで来たわけでは、ないのだから。


「じゃあ、面倒をかける事になるけど、
 話の方、お願いするわね。
 

 …あっ、練習中に長々とごめんなさい」
「ああ、いや。
 久々に先輩と話せて。よかったです」
「もう、そういうこと、誰にでも言ってるでしょう?」


ばればれか。
かまをかけられて苦笑したチャラ男だったが、口許に手をやって笑う先輩は、案外まんざらでもないようにも見えるし、余裕の笑みにも見える。逆に思うくらいだ。誰にでもそういう完璧な笑み、見せてるんですか、なんて。


「いやいや…やっぱ俺にとってきら高で先輩っつったら
 皐月先輩ですから」
「ふふ…今は私にとってもそうかな、なんて…」
「は?」
「え、あっ、う、ううん、なんでもないわ」


何か口走ろうとしたのを誤魔化す、優等生の先輩。…私にも数多くの後輩が居るはずだけど…やっぱり最後の舞台で一緒に隣で吹いたあなたの音は、今でも忘れられない…。そんなことを思ったのをうっかり口に出さないように、皐月は、ようやく後ろにやっていた手を前に出し、もう一つの本題を済ますことで、この場を乗り切ることにした。


「それじゃあ、高見君。
 これあげるから、頑張って」
「え。
 
 おっ、あっ!これって…」


しっかり包装された小さいけれど嬉しすぎる贈り物を譜面台に置かれて、先輩の顔を見やる直人。が、先輩はひとさし指を自分の口にあてて、「しーっ」と声を出さないように示唆すると、イタズラにウインクを投げかけてきた。その破壊力の高さに、現役サックス吹きは思わずにやけてしまう。


「迷惑料と感謝料、かな。ふふ。

 それじゃあね」


そう言い残すと、ちょっと照れくさかったのか、もう早歩きで渡り廊下を立ち去ろうときびすを返す皐月。結構うれしそうな反応が見れて、あげた本人もつい、表情がゆるんでしまう。


…ああ、どうしてかしら。すごく恥ずかしい。
こんな顔、彼には見せられないわ…。


緩む口許を手で覆い隠して歩く背中に「あざます!」の声が追ってくる。が、その声を振り切って1階に降りた頃には、もうソプラノのマウスピースの音が、渡り鳥不在の冬のきらめき市で、さえずり始めていた。


…ああ、恥ずかしかった。
彼、嬉しそうだったし…渡せてよかったわ。


……これが、最後なのよね。
来年からはもう、学校も違うし、部活も…。



今日もそう、彼は部活の他の女子たちからチョコを貰うだろう。いや、意外とそうでもないだろうか。そうでないにしても、ひとつも貰わないということは無いだろうし。


…高見君には、本命の女の子が誰か、居るのかしら…。
噂はいくつか耳にしたことがあるけれど、どれも違う女の子との話で、はっきりしないし…。


…そういうこと誰にでも言ってるでしょう、なんて。
あなたの本心にちゃんと聞けたら、どんなに……。



卒業式の日は遠くない。
その時、同級生たちはあの「樹」の下に誰かを呼ぶのだろう。


でも、自分は。
考えてみればこの自身の気持ちが何なのかもわからない。やっと吹奏楽部の最上級生らしい言葉をかけられる相手を見つけたことに、止まった時計が燃料を欲しているだけなのか、それとも…。


ふと皐月は振り向く。
今まで何度も上り下りした教室棟の階段が、口を閉ざしておきながら、後輩のサックスの声で鳴く。


…高見君、あなたに…想う人は、居る?

きっと部活に夢中なあなたには、そんな気持ちも息を潜めていて、見えないだろうと思うけど…。



後輩だからこそ、その気持ちに同情できる。
忘れ物はもう取り戻したはずの音楽室が、何か皐月には、恨めしくも恋しくも思えて、先ほどとは違う胸の痛みに、目を閉じて吐息を漏らすのだった。



























朝練は8時の予鈴で終わらなければ、楽器を片付けたり音楽室周りの施錠をしたりと、そういうことをしていると朝のSHRに間に合わなくなる。


だが今日のソプラノサックスは、やたらギリギリ、8時10分近くまで粘っていたものだから、幼馴染だとか同じパートの読書家だとかに、ぼろくそに言われてしまった。


「練習したいのはわかるけど、 
 それであんたが授業間に合わなくなったら
 また先生の立場悪くするだけじゃん」
「そうよ、だいたいチャイムが聞こえたら
 キャップをしめなさい、っていつも言ってるじゃない」
「はいはいはいはいはい!


 はーい!はーい!」
「きいーっ!何よその態度!」
「やぁやぁ、ありがとうありがとう!」
「伊集院君のマネしてもダメ!
 ちょっとは反省しなさい!」
 

都子に「ほら、もっと言ってやって!」と促されて、語堂のお説教もヒートアップする。それを背中に受けながらだるそうにスワブを管体に通す直人に、元運動部の幼馴染は、ちょっとフォローするみたいに、話を変えてやる。


「あ、で、でも、ほら。
 直人君、今日ちょっと調子よかったよね?」
「あ、わかる?
 光に言ってもらえるとなんか自信つくぅ」
「そ、そうかな」
「そうねー。
  
 ナチュラルだけどパワーもあって。
 あなたらしかったんじゃない」


和製英語を織り交ぜて、肩をすくめつつほめてくれるライバル兼パートナー。もう楽器も片付け終わっているのに、直人が楽器ケースを寝かせている棚に座り込んで、足をプラプラさせて待ってくれているのは、なんだかんだ信頼関係があることをにおわわせる。


光に褒められたことは嬉しい。
だがそれがこの人に具体的に言ってもらえたとなると、尚更。そう言わんばかりに、元来褒められて伸びるタイプではない彼は、「でしょうが」なんて冗談口で指をさして言う。


「言ったっしょ、勝ちにいくんだから」
「wow、こわいこわい」
「こら!手・を・う・ご・か・す!」
「wow、こわいこわい…」
「またぁ!すぐマネするんだから」


にぎやかな音楽準備室を、「あと3分!」とか秒読みされながら、まるで爆発する建物からの脱出劇みたいに、急かされてみんなで出る。


そこからはもう、鍵を預かった人などは走らないと間に合わないぐらいの猶予しかなく、一番粘った罰として鍵を預かった男子は、かつて恐怖のうさぎさんから逃げ切った廊下、階段を、さっさと走っていった。


やっぱり渡せなかったなぁ。
光などはそう思ったが、他の女子たちも、特に直人に何かそういうことを思わせる発言や態度は、取っていなかった。


…みんなは別に直人君にチョコ渡したりはしないのかな?
都子ちゃんなんて、絶対あげるのかなぁって思ってたけど…。


みんなで渡り廊下を歩いて教室棟に向かう際、光はふと疑問に思う。中学でもそういえば、バレンタインだなんだといっても、陸上部内では別に、みんながみんな、その風習に乗っていたわけではなかった。


――別にバレンタインとかよくない?


――お返しとかあるしさぁ、逆にめんどいとか思われそう。カレシでも居ればあげてたけど。


なんて声もちらほらあった。
結構サバサバした人が集まった部活だったから、らしいといえばらしい感じもしたものだ。


それが高校生にもなると、尚更そうなのだろうか。
義理でも、勘違いされたら困るし。毎年あげなきゃいけないみたいになるのも厄介だし。なんて。



ただ、「樹」の伝説といい、朝の騒ぎといい、私立きらめき高校なら、そうドライに事が運ぶはずはない。…ような気がするんだけど。光のそんな予感は、教室に入った時に見えてきた光景が、ちゃんと的中していたことを教えてくれた。


多分、つづく



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